所収:兵庫県教育委員会事務局文化財室(編)『兵庫県の近代化遺産―兵庫県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』2006年3月 p.221
※WEB掲載に際して図版を追加した。
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旧 篠山町役場
分野:官公庁
所在地:篠山市北新町97
構造:木造・階数1
竣工年:大正12(1923)年
城下町篠山の城址,大手門前に広がる商家地域の一角に建設された木造洋風建築。平面は立地である角地に対応させてL字型とし,角部正面玄関,各辺にも出入り口を設ける。当初はこの中央部分を役場執務室とし,両翼の奥に会議室や諸室を配置していたと思われる。
立面は,基礎部分をレンガのイギリス積(レンガ長辺と短辺を各段ごと交互に積む形式),腰高までの壁を竪羽目,それより上部を横羽目板張とし,縦長の上げ下げ窓を並べる。正面玄関の上部は切妻,脇の出入り口上部はマンサード屋根(腰折れ屋根)の庇とアーチ屋根を組み合わせ,破風には柱型を見せハーフティンバー風に処理している。玄関ポーチを支える柱は,通常の太さの角材ながら2本一組に用いてペア・コラム風に扱っている。さらに玄関ホールを覆う屋根には越屋根を付し,その破風には,やはりハーフティンバー風にキングポスト・トラスのかたちを見せる。屋根中央には塔を載せる。以上のように,建物隅の玄関周辺に簡素ながら洋風建築の諸要素が集まり,こぢんまりと親しみのある表情が生まれている。(梅宮弘光)